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ろうじゅうのめがね
小笠原壱岐守
佐々木 味津三
佐々木味津三『小笠原壱岐守』。同一底本的分册已合并为一书。收入:老中の眼鏡、十万石の怪談、流行暗殺節、山県有朋の靴。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,249 字 · 115 页
おれをどうする! 見せつけるのかっ。羨やましがらせをするのかっ。それへ出い!」
「ば、ば、馬鹿なっ。目の前で、枕元で芸者買いせい、と言うたじゃごわせんか! お言いつけ通りにしたのが、なぜわるいんです!」
「ぬかすなっ。それにしたとて程があるわい! ずらりと並べっ」
「き、き、斬るんですか! 同志を、仲間を、苦労を分けた手下を斬るんですか!」
「同志もへちまもあるかっ。腹が立てば誰とて斬るんじゃっ。憎ければどやつとて斬るんじゃっ――一緒に行けいっ。たわけたちめがっ」
さっと横へ、青い光りが伸びたかと思うと一緒に、ざあっと、小次郎たちふたりの背から血がふきあがった。
その血刀をさげたまま、直人は、そぼふる雨の表へ、ふらふらと出ていった。待ちうけるようにして、バラバラと影がとびかかった。
「神代直人! 縛につけいっ」
しかし、直人は、もう逃げなかった。心底腹を立てて斬ったよろこびを楽しむように、死の待っているその黒いむれの中へ、ふらふらと這入っていった。
――秋もふけた十一月の五日、大村益次郎は、直人の与えた傷がもとで、あえなく死んだ。
捕われた直人もまた、大西郷たちの心からなる助命運動があったが、皮肉なことにも、山県狂介たちの極刑派に禍いされて、まもなく銃殺台にのぼった。