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しょうせつとげんじつ

小説と現実

宮本 百合子

小沢清の「軍服」について

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,911 字 · 4 页

青空文庫

れる。「軍服」は、この作者のもっている自然ないいところと、自然でいいというだけでは、複雑な社会機構を描くに不十分であるという事実とが、くっきり出ている。作者にとっても読者にとっても、なかなか面白い勉強の材料である。

日本の軍隊は、非常によく組織された殺りくのシステムであった。日本の警察とスパイのシステムが世界に冠たるものであるように。それは十四年間の戦争中に、戦争の段階に応じて残酷さの程度をまして来た。特攻隊をつくり出すまで非人道になり、絶望した若い人々を、そのせっぱつまった心理から、猛然として敵前上陸でも何でもしてしまうようにもって行った。ちゃんと心理的にそういう戦術をつかった。このことは、将校教育をうけた人は知っていよう。

「軍服」は、何年ごろの、軍隊経験であったかということを作者は、はっきり書いていない。小さいことのようだが、これはこの作品の真実性のために大切である。もうすこしあとになってからの軍隊は、「軍服」よりもっとえらいところになったのだから。何年のこと、がはっきり示されると、日本じゅうのどっさりの読者の心に、俺の時代はこうだったと自分たちの軍隊生活の経験、野戦での経験が思い出されて来て、作品はいっそう感動をもってよまれる。