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しょうせつしゅう「せいにょにんぞう」こうき

小説集「聖女人像」後記

豊島 与志雄

「聖女人像」光文社、1948(昭和23)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,673 字 · 4 页

青空文庫

終戦後私は、普通の小説を少しく書き、近代説話と自称する小説を多く書いた。この近代説話ものについては、聊か特殊の意図があったのである。

いったい、短篇小説では、作者が真に言いたいこと、つまり作品の中核は、煎じつめれば案外に僅かなもので、大部分は主としてそれへの肉付けとなる。主要人物の境遇とか環境とか生活様式とか、さまざまなものを書かなければならない。然し、作者にとっては、執筆に際して何を考えたか、何を感じたか、それが最も大切なのである。言い換えれば、作品のモチーフが最も大切なのである。如何に面白い話があり、如何に興味ある事件があろうとも、どうしてもそれが作品にならない場合が多いことは、モチーフの重要性を証するものであろう。そしてこのモチーフとは、作者が作中人物と共感者になり、共犯者になり、共動者になるところの、一種の契機だと、ごく素朴に解釈してもよかろう。

このモチーフは、普通の場合には、小さなもの、僅かなもの、一寸したものであることが多い。けれども往々にして、モチーフが大きくふくれあがることがある。小説の形式を破壊したがるほど拡大することがある。