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こさかいふぼくしスケッチ
小酒井不木氏スケッチ
国枝 史郎
「新青年」1926(大正15)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,809 字 · 12 页
ひとつ窓でもあけましょう」
しかし私は遠慮する。「いえ、暑くはなさそうです」その癖充分発汗している。で話が継続する。と氏は復もや云う。
「暑いようです、開けましょう」
「暑いものですか、寒いくらいです」発汗しながら復遠慮! で、話が継続する。と氏は黙って立ち上がり、手早くガタンと窓を開ける。氷柱のような一本の風が、窓を通して吹き込んで来る。私の汗は引っ込むが、氏はそんな場合咳をされる。
物を書くということが、現在の氏には興味らしい。その興味の趣くままに、ペンを執り文を綴るらしい。歌い乍ら物を書く、斯う云ってもひどく間違ってはいまい。やがて夫れが形を変え、憤り乍ら物を書く、この境地に達した時、氏の態度も作風も、一変するだろうと想われる。
「不断の摂生」ということが、氏の肉体養生法であるが、文芸の士としての氏の態度も、これにピッタリ当て篏まっている。如何にもむらが無く秩序正しい。そうして人との接待面にも、夫れがハッキリ窺われる。不愉快な近代の芸術家型たる、お天気師の態度が無いのである。
休火山と云うものは恐ろしい。何時か必ず爆発するぞ、こういう約束を持ち乍ら、静まり返っているからである。