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ことり

小鳥

宮本 百合子

「明星」第6号、1922(大正11)年4月1日発行

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,264 字 · 7 页

青空文庫

始め、我々が小鳥を飼ったのには、別に大した理由もなかった。去年の夏、田舎に行き、青々と葉を重ねた葡萄棚の下に、真黄なカナリアの籠の吊してあるのを見た。止り木から止り木へ、ひょいひょい身軽に移る度毎に、細く削った竹籠のすきから、巻いた柔かそうな胸毛の洩れる姿が、何ともいえず美くしかった。

「いいわね」

と私が云う。

「僕等も何か飼ってみようか」

良人が云う。帰京すると、彼はいつの間にか大きな金網を買って来た。そして、余りの休暇の折々に、大工の音をさせて、大きな円天井の籠を拵えた。そして、

「あら、真個にお飼いになるの」

と云う間もなく、可愛い二羽のべに雀と、金華鳥、じゅうしまつなどを、持ち運びの出来る小籠で、大切そうに運び込んだのである。

私は悦び、額をつけて中を覗いた。子供の時、弟が、カナリアと鶏、鳩などを沢山飼ったことがある。ろくに見もしないうちに、その一時の物好きが止んだので、私が自分の家の中に、こんな小鳥を持ったのは、真に久しぶりのことなのであった。

出て行って、水浴びの出来そうな鉢を買ったり、巣を買ったり、楽しく世話をやいた。名が急には覚えられないので名刺のうらに書きつけた名札を籠の隅に貼り、良人の注意が主で、今日まで家族の一員となっているのである。