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しょうじょとろうへいし

少女と老兵士

小川 未明

「中央公論」1939(昭和14)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,697 字 · 10 页

青空文庫

顔にはひげがのびて、片手を繃帯していました。たぶん激戦に、手をやられたのでしょう。とも子ちゃんは、その兵隊さんのところへいって、自分が骨をおって色紙で造った、千羽づるとかめの子をあげました。

「ありがとう。」と、兵隊さんは、にっこりとして、会釈しました。

「おじさん、うちの兄さんを知らないでしょう。」

「あなたのお兄さんも、戦争にいっていられますか。」と、兵隊さんが、ききました。

「ええ、もう一年になるのよ。」

少女は、なにか考え出そうとするように、ぱっちりとした目をみはって、窓の方を見ました。

「それは、ご苦労さまですね。」

年老った兵隊さんは、この子供の頭をなでてやりたい気がしましたが、やめました。

「また、いいものこしらえたら、おじさんに持ってきてあげるわ。」

少女は、振り向いて、先生の立っていらっしゃる方へ走っていきました。

病院の屋上へ出ると、清らかな流れのように、いつも涼しい風が吹いていました。月がなく、星明かりでは、たがいの顔もよくわからなかったが、傷兵たちは、静かにして、レコードに聞き入っていました。両眼を失って、ここまで上ってくるのに、二人の看護婦の肩に助けられなければならぬ人もあったが、その人もやがて腰をかけると、じっとして、同じように聞き入っているのでありました。