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しょうじょとろうへいし
少女と老兵士
小川 未明
「中央公論」1939(昭和14)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,697 字 · 10 页
あちらの地平線をほど近い、にぎやかな街の燈火が、ぽうと闇を染めているのを見て、兵士の中には、戦場を思い出すものもあったでしょう。ちょうどレコードは、愛馬行進歌をうたいはじめたところです。
老兵士も、みんなといっしょに、この歌に耳を傾けていましたが、汲み尽くせない悲しみが、胸の底から、新らしくこみ上げてくるのを覚えました。同時に、心の目は、昼間慰問にきてくれた、幼稚園の生徒らの混じりけのない姿をよみがえらせました。そして、あの目のぱっちりした少女の、
「おじさん、うちの兄さんを知らない?」と、いった言葉までが、いまだに、耳についているのを感じたのです。
おそらく、あの子の兄も補充兵であろうと思うと、老兵士をして○○攻撃の際に、自分の見た一光景を思い出させるのでした。険阻な敵の陣地へ突撃に移る暫時前のことです。
「君たち、いらないものは捨て、ごく身軽になっていくのだ。」
こう注意してやると、後方から、前線へ送られたばかりの、若い兵士の一人が、目前で、背嚢をおろして、その内を改めていました。そのとき、老兵士は、ふくらんだ背嚢をみつめて、まごまごしている若い兵士に向かって、