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しょうじょとろうへいし
少女と老兵士
小川 未明
「中央公論」1939(昭和14)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,697 字 · 10 页
「なにがそんなに入っているのか。」と、きいたのです。すると、その年若の兵士は、一つ、一つ出して見せて、
「これは、お守りです。出るときに、みんながくださったのです。」
「これは、お薬りです。お母さんが、入れてくださったのです。」
「これは、日の丸の旗に、たくさんの人の名が書いてあるのです。」
「これは、姉からの手紙です。みんな、大事なものばかりです。」
そういって、じっと老兵士の顔を見上げた、あの青年の澄んだ目には、これを身につけて自分は死んでいくという純情があらわれていました。
「いや、おれたちの体が弾丸になるのだ。みんな捨ててしまえ!」と、老兵士は、口まで出たが、無理に、だまって、じっと若い兵士の顔を見返しました。その光った瞳の中に、たとえ肉体は亡びても、けっして永久に死なない生命のあることが刹那に感じられたのであります。
いま、老兵士は、蓄音機の歌をきくためでなく、そのときのことを思い出して、深くうなだれていました。
「まもなくして、あの突撃が起こったのだな。」
大きく開いた目、真っ赤な顔、火がだるまのようになって、敵陣目がけて、一塊となって、突っ込んでいった友軍の姿が……。