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びょうぶはたたまれた

屏風はたたまれた

山本 周五郎

「文藝春秋」文藝春秋新社、1957(昭和32)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,953 字 · 24 页

青空文庫

「ばかなことを云うな」と弥十郎は声をしずめて云った、「ほかのこととは違う、不謹慎すぎるぞ」

二人はすぐにあやまった。しかし弥十郎の怒りかたが突然であり、あまりに激しかったので、気をのまれると同時に、なにか納得のいかないような顔つきをした。たしかに、弥十郎は二人に対してではなく、自分に対してどなったのである。二人の話を聞きながら、頭の中でなんの関連もなく、奈々の方と千夜とが同じ人ではなかったのか、と思ったのだ。かれらの話が、そんな空想をよび起こしたのであろう。なんの関連もなく根拠もない、まったく理由のない想像で、そう気がつくなりどなってしまったのである。――月の出るまえに、空はすっかり雲で掩われ、湿っぽい風が吹きだしたから、三人は食事を済ませて「川西」を出た。

その夜、弥十郎は眠れなかった。

いちど頭にうかんだ想像が、しだいに根づよく、しだいに現実感を伴ってくる。否定しようとすればするほど、奈々の方は千夜だということが、動かない事実のように思えるのであった。また、吉村の家には藩公の血が続いている、と云った父の言葉までが、新しい意味で思いだされ、やがて堪りかねて起きあがると、手早く常着に替えて、父の寝間へいった。