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びょうぶはたたまれた
屏風はたたまれた
山本 周五郎
「文藝春秋」文藝春秋新社、1957(昭和32)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,953 字 · 24 页
伴れてゆかれたのは二階のいちばん奥で、女中が声をかけて襖をあけたとき、弥十郎は初めてどきっとした。
――いたずらなら笑って済ませる。
そうだ、と彼は思った。いたずらなら却っていい、本当だとするとこと面倒になる、これはしまったぞと思った。しかし、襖をあけた女中は去り、中年の婦人が彼に挨拶をしていた。
「ようこそ」と婦人が云った、「ようこそおいで下さいました、人の眼につくといけません、どうぞおはいり下さいまし」
弥十郎がはいると婦人は襖を閉め、設けの席を彼にすすめた。
婦人は自分がゆきであると名のり、ぶしつけの詫びと、来てくれた礼を述べながら、巧みなとりなしで彼に着替えをさせた。彼は着替えなどするつもりはなかったが、あまりに相手のとりなしが巧みで、拒む隙もなかったのである。そして、着替えが済むとすぐに、隣り座敷の襖をあけて、弥十郎を押しやるように、その座敷へはいった。そこは十帖ばかりの広さで、雨戸が閉めてあるのだろう、立て廻した屏風を、雪洞がほのかに照らしており、すっかり夜のけしきになっていた。
「お嬢さま」と婦人が屏風の中へ呼びかけた、「吉村さまがいらっしゃいました」