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びょうぶはたたまれた

屏風はたたまれた

山本 周五郎

「文藝春秋」文藝春秋新社、1957(昭和32)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,953 字 · 24 页

青空文庫

三度めに逢って別れるとき、ゆきという婦人は彼の耳に囁いた。

――嬢さまはまだなにも御存じではなし、それに女のことでございますからね、あなたが手引きをしてあげて下さらなければ。

そしてなおこう付け加えた。

――この次にはどうぞ、きっとでございますよ。

その囁きがなにを暗示するか、もちろん弥十郎にはわかった。初めからわかっていたというほうが本当だろう。しかしそう囁かれたときはさすがにたじろいだし、橋場を指定して来た手紙に、どうしようかと迷ったのも、そのたじろいだ気持が尾をひいていたようである。しかしその日になり、時刻が近づいてくると、彼はすっかりおちつきを失い、決断のつかぬままに、まるでなにかに追いたてられるような気持で、外出の支度をした。

橋場まで駕籠に乗っていったが、その途中で彼は「みちあけの式」のことを思いだした。吉村家に五代まえから伝わっている独特の家法で、長男が十五歳になったときに行う成年式といったふうなものである。――事前にはなにも知らされず、式の間という部屋に寝かされる。寝衣は白の清絹で、枕も箱枕ではなく、白い麻布で包まれた長枕であった。