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やまとむら

山と村

木暮 理太郎

「山」1934(昭和9)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,705 字 · 10 页

青空文庫

アーヴィングの『スケッチブック』を初めて読んだとき、リップ・ヴァン・ウィンクルの話の冒頭に、カツキル連山が季節の移り更りや天候の変る毎に、いや実に一日の中でも刻々に不思議な色やら形やらを変えるので、遠近のおかみさん達から完全な晴雨計と見做されていたということが書いてあるのを見て、直に思い出したのは故郷の赤城山のことであった、そして外国にも同じような風習が自然と行われているのを非常に興味深く感じたのであった。

私の生れ故郷である東上州の新田郡は、利根川の沖積地に属している南部を除けば、其他は東京附近の※と同じ赤土の硬い層から成っている。これは疑もなく赤城山から噴出された火山灰が母体を遠ざかりながらも、尚お全くは縁が切れずに、遥に離れた麓のあたりを恐らく水流に漂いつつ、次第に変質凝固して、火山に特有な美しい裾野の一部となったものであることを物語っている。その証拠には、一度にも足りない緩い傾斜ではあるが、徐ろに高まっていつしか六峰駢峙した山頂へと連っているので、遠く横から眺めると空中に高鳴りする鏑矢のような線を描いている。私の村はこの広大な裾野の東南の端の方に、一は熊野社を一は大鷲社を氏神とする二氏族が、赤城明神を産土神と仰いで、安住の居を占めた猫の額程の土地である。