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やまとむら
山と村
木暮 理太郎
「山」1934(昭和9)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,705 字 · 10 页
燕が訪れて営巣に忙しい姿が見られるであろう。
冬の間に村から見られる山の中で、姿体の最も美しいのは浅間山である、鼻曲連山の上に聳立している富士形は、七百米に近い高度を有し、左右均整の妙は寧ろ富士に優るものがある、外輪山の剣ヶ峰や牙山などは、左下に低く寄り添っているので少しも邪魔とはならぬ。雪面は鉋をかけたように滑かで些の凹凸なく、晴空に悠然と煙を吐いているさまは、全く天外に白磁の大香炉を据えたようである。この崇高な山に対して嘲るような「浅間山から鬼が尻を出して、鎌で掻き切るようなおならをした」という意味の香しからぬ俚謡が時として村人の口の端に上るのは、爆発の際、怖る可き大噴煙が常に東に流れて、灰を降らし硫気を漂わすことを呪ったものであろう。天明三年の大爆発には、村でも降灰一尺を超えたそうである。
稲含山の左の肩には、白い雪の山の寸線がきらりと光っていることがある。村人は木曾の御岳だといい、私もそう信じていたが、これは八ヶ岳の赤岳であることを後に知った。形のよく似ている荒船山は、村では破風山の名で通っている。あの奇峭を誇る両神山は、今も其名を知っている村人は一人もないのである。