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やまのこんじゃく

山の今昔

木暮 理太郎

「山岳講座」1936(昭和11)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,554 字 · 42 页

青空文庫

登山の変遷

イ 維新前

現代の登山は維新前に於ける登山の延長であるとは言えないかもしれない。両者は出発点を異にして発達したものであるから。然し其根柢に於て共通した思想はないであろうか、それはある、即ち自然愛の思想である。

登山の変遷

イ 維新前

我国に於ける登山の変遷は、維新前と維新後とに大別し、更に之を適当に区分して記述しなければならぬのであるが、今は其余裕がないので、ここには唯其梗概を略叙するに止め、詳細は他日の機会に譲りたい。

維新前は何事も旧慣を墨守しなければならない階級制度の束縛を受けた時代である。横に拡ることは多少自由であっても、縦に伸びることは殆ど禁止されたのも同様であった。人は誰しも其分に安じていなければならない。それには諦めが肝要である。諦めは安易を伴い、与えられた型に満足して其埒外に躍り出すことを断念させた。これが登山にも影響しなかったか、直接ではないが間接には確に影響を受けたようである。成程登山は盛であっても、其型式は固定し、年々歳々同じ登山が繰り返されるのみで、内容には少しも変化を起さなかった。量は増しても質に於ては依然たる宗教登山で、一歩、唯一歩を蹈み出した宗教を離れての登山が遂に行われるに至らなかったのである。