轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
やまのてのこ
山の手の子
水上 滝太郎
「三田文学」1911(明治44)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,551 字 · 31 页
けれどもはかない私の思い出の中心となるのはこの柳屋の娘ではなかった。
都もやがて高台の花は風もないのに散り尽すころであった。ある日私はいつもの通り黒門を出て坂を小走りに馳け下った。その日に限って私より先には誰も出て来ていないので、私はしばらく待つつもりで柳屋の縁台に腰かけた。店番の人も見えなかったがほどなく清ちゃんが奥から馳け出して来る。続いて清ちゃんの姉さんも出て来て、
「オヤ、坊ちゃん一人ッきり」
と言いながら私の傍に坐った。派手な着物を着て桜の花簪をさしていた。私の頬にすれずれの顔には白粉が濃かった。
「今日は皆遊びに来ないのかい」
「エエ、町内のお花見で皆で向島に行くの。だから坊ちゃんはまた明日遊びにおいで」
娘は諭すように私の顔を覗き込んだ。
間もなく「今日は」と仇っぽい声を先にして横町から町内の人たちだろう、若い衆や娘がまじって金ちゃんも鉄公も千吉も今日は泥の付かない着物を着て出て来た。三味線を担いだ男もいた。
「アラ、今ちょうど出かけようと思っていたとこなの。どうもわざわざ誘っていただいて済みません」
清ちゃんの姉さんはいそいそと立ち上った。