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あずさがわのじょうりゅう

山岳紀行文集 日本アルプス

小島 烏水

小島烏水『山岳紀行文集 日本アルプス』。同一底本的分册已合并为一书。收入:梓川の上流、上高地風景保護論、高山の雪、日本山岳景の特色、雪中富士登山記、雪の白峰、白峰山脈縦断記、谷より峰へ峰より谷へ、不尽の高根。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 138,795 字 · 274 页

青空文庫

しかし、駒鳥の錘を投げるような鋭い声は、沈滞がちな、中層の空気を引っ掻き廻している。

飯の準備をしているうちに、驟雨が一としきりあって、雷鳴が近くに聞えたが、夜に入って、星が瞬いた……かと思うと、淡い、軽い霧が、銀河のように空に懸る。焚火の烟は、油紙の屋根の継ぎ目から洩れて、白い柱が立っては崩れ、風に折れて地を這いながら、谷中を転げてゆく。火が、ぴしぴし、音を立てて、盛に燃え出すと、樺の立木の葉が、鮮やかに、油紙の屋根に印して、劃然とした印画が炙り出される。晃平が、先刻、未だ日の暮れないうち、朝飯の菜にとて、山款冬数十茎を折って来たのを、みんなして、退屈凌ぎに、繊維を抜いては、鍋へ投げ入れる。世間話がはずむ……夜半になると、焚火は、とろとろと消えかかる。寒気の強いのと、明日の天候が気になるので、眼がよく覚める。

露営地の外では、細長い爬行動物――この谷の主――東俣の川――が、蜿ねりながら太古の森林の、腐れ香に噎んで、どこまで這って行くことであろう。

白花石楠花と高根薔薇(白峰山脈の一角に立つ記)

ゆうべは、まんじりともしなかった、油紙の天井を洩れる空に、星が閃めいていれば、明日の好霽を卜されるので、仰むようにして悦ぶ、その次に覗くと、星どころではない、漆黒の空である、人の心も泣き出しそうになる、しかし