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やまつばき

山椿

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1948(昭和23)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,911 字 · 32 页

青空文庫

七

「そうだよ」主馬は振返った、「二年めには三日早い、あれの三回忌は十三日だ、然し法会の前がいいと思ってね、――それとも」

「いいえまいりましょう」良三郎はすぐに静かな笑いをうかべた、「正直に申しますが、思い違いをしていました、あれは三月だったものですから」

「では三月にしようか、私はそれでもいいんだが」

「いいえ今日にします、今日のほうが却って、――」

そして彼は進んで歩きだした。

宗泰寺は春日丘の下にあった。石段を登って山門をはいると、庭を掃いている若い僧が、親しげに挨拶をした。

「方丈は明いていますか」主馬はそう云いながら、馴れたようすで玄関からあがった。若い僧の声で走って来た小坊主が、口の端を手で拭き拭き、客間へ案内した。

七

「ここでやって迷惑はかからないのですか」

坐るとすぐ良三郎が不審げに云った。

「やるというのは、なにを、――」主馬は立とうとした膝を戻した、「まさか腹を切るという意味じゃないだろうな」

「然しそのために来たんじゃあないのですか」

「なんのためかといえば生きるためさ、榎本良三郎は生きるんだ、それだけの証拠をおれはみせて貰った、だから此処へ来たんだよ」