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さんけいにいくるひとびと

山谿に生くる人々

葉山 嘉樹

――生きる為に――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,699 字 · 67 页

青空文庫

という不逞な思想の、当然の結果だった。

「どうも、借金の催促状などというものは、血圧を高める作用があるね。借金するという事実は非常に健康な事だが、催促状になると、もう不健康になるて」

と、大山は濡れ手拭で鉢巻をしながら言った。

昼飯の漬物を上げていた女房は、

「して見ると、あんただって気になると見えるわね。良心が残ってる証拠だわ」

「変な時に褒めるない。ますます気持が滅入っちまわあ」

大山は、半纏を脱いで、褌一つになって、隅っこの暗いところへ、這って行ってゴロリと横になった。それはまるで、その手紙が、当の本人で、その目から逃げるためのようであった。

大山が、暗がりで寝転がって、借金の返済という個人的な事実から、

――俺が奴に返せないと、奴は、奴の借りを返せない。すると、そいつがまた返せない。とすると、どうなるんだ。そいつをトコトンまで押して行ったら、ふんだんに持ってる奴が、返されなかった。暫く、辛抱さえすればいいってことになるんじゃないか。ええと――

と、その考えを突き詰めようとすると、板壁一枚隣りの飯場の婆さんの、カン高い饒舌がうるさく耳につき出した。