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さんけいにいくるひとびと

山谿に生くる人々

葉山 嘉樹

――生きる為に――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,699 字 · 67 页

青空文庫

と思ったがもうそうなっては、どんな豪勇の者も、「ハッパと度胸較べ」はできないのだ。

ドーン、ドーンと鳴ると、機関銃口が、こっちを向いてでもいたように、バラバラっと、低く地を逼って、岩片が飛んで来た。大山たちは立ち樹を楯にとっていたので、何ともなかったが、他のトロを押している者や、捨場を掻いている者たちは、パッと首を下げた。

穴が、こっちを向いていたのである。

幸いに、負傷者はなかったが、鋭い刃をした岩片がたくさん落ちていた。

どういう訳であるか、ハッパが鳴って、バラバラッと岩片が飛んで来ると、誰もお辞儀でもするように、ハッと前に頭を下げるのである。顎を突き出して上を向く者などは一人もないのだ。

こうして、トロの線路の敷けるだけの幅で、緑屋の上の切り取りを上流へ突っ込んで行った。

ところが、その切り取りとこの切り取りとの間に、小さな沢があった。沢とは言っても、雨が降ってもようやく小さな流れをなし、降らねば、岩松や苔の下を潜って、浸み流れる程度のもので、それが緑屋と、新屋という旅館の水源になっていた。

その年は天候がおそろしく不順だった。

梅雨期には、滅茶苦茶に照って、体中の水気を焙り出してしまうほど暑く、土用に入ってから、ジトジト降ったり、涼し過ぎたり、麹室の中みたいに暗くて蒸し暑く息苦しかったりした。