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さんけいにいくるひとびと

山谿に生くる人々

葉山 嘉樹

――生きる為に――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,699 字 · 67 页

青空文庫

大山は、もうしまいの方の口上は、外に出て行きながら喋舌っていた。

配給事務所から、屋根板を一束もらって、それを緑屋のおやじ、――それは乾物のかますによく似ていた――に渡し、「こっちでやるはずですが、今日は忙しいから一つ、お頼み申します」と言って、大山は捲上の方の道から丁場に上がって行った。

大山が、急峻な道を上り、半出来の線路丁場に頭だけ出した時だった。

緑屋の上の切り取りの方から、「命がけ」みたいな大きな声が聞えた。

大きな声は、野丁場ではいささかも珍らしいことはない。絶えず怒鳴り、喚き、罵っているといってもいい。それは必要からそうされるのだ。ものの一丁もあろうという河原から、丁場のウインチへ、「トロがトンボ(転覆)したから、捲くのを待て」というような場合、腹一杯喚かなければ、用が足りないのである。

だが、この時の小林の大声は、単なる大声でも、怒声でも、叫喚でもなかった。

大山が丁場にその姿を現わすと、緑屋の上の切り取りの辺が、何だか水の底ででもあるように、ひっそりと沈み込んで、静かであった。

そして、小林はその切り取りの真下から離れて、下流寄りの埋立ての方へ立っていた。