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やまごしのあみだぞうのがいん
山越しの阿弥陀像の画因
折口 信夫
「八雲 第三輯」1944(昭和19)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,125 字 · 30 页
さて、今覚えている所では、私の中将姫の事を書き出したのは、「神の嫁」という短篇未完のものがはじめである。此は大正十年時分に、ほんの百行足らずの分量を書いたきり、そのままになっている。が、横佩垣内の大臣家の姫の失踪事件を書こうとして、尻きれとんぼうになった。その時の構図は、凡けろりと忘れたようなあり様だが、藕糸曼陀羅には、結びつけようとはしては居なかったのではないかと思う。
その後もどうかすると、之を書きつごうとするのか、出直して見ようと言うのか、ともかくもいろいろな発足点を作って、書きかけたものが、幾つかあった。そうして、今度のえじぷともどきの本が、最後に出て来たのである。別に、書かねばならぬと言うほどの動機があったとも、今では考え浮ばぬが、何でも、少し興が浮びかけて居たというのが、何とも名状の出来ぬ、こぐらかったような夢をある朝見た。そうしてこれが書いて見たかったのだ。書いている中に、夢の中の自分の身が、いつか、中将姫の上になっていたのであった。だから私から言えば、よほど易い路へ逃げこんだような気が、今におきしている。ところが、亡くなった森田武彦君という人の奨めで、俄かに情熱らしいものが出て来て、年の暮れに箱根、年あけて伊豆大仁などに籠って書いたのが、大部分であった。