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みんざんのいんし

岷山の隠士

国枝 史郎

「大衆文芸」1926(大正15)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,095 字 · 19 页

青空文庫

まして謂んや渤海語など」

「それは有難い。これを読んでくれ」

渤海の国書を突き出した。

李白は一通り眼を通した。

「では唐音に訳しましょう」

そこで彼は声高く読んだ。

「渤海奇毒の書、唐朝官家に達す。爾、高麗を占領せしより、吾国の近辺に迫り、兵屡吾界を犯す。おもうに官家の意に出でむ。俺如今耐うべからず。官を差し来り講じ、高麗一百七十六城を将て、俺に讓与せよ。俺好物事あり、相送らむ。太白山の兎、南海の昆布、柵城の鼓、扶余の鹿、鄭頡の豚、率賓の馬、沃州綿、泌河の鮒、九都の杏、楽遊の梨、爾、官家すべて分あり。若し高麗を還すことを肯んぜずば、俺、兵を起こし来たって厮殺せむ。且つ那家が勝敗するかを看よ」

皇帝はじめ文武百官は、すっかり顔色を変えてしまった。

「いま辺境に騒がせられては、ちょっと防ぐに策はない。一体どうしたらいいだろう」

風流皇帝の顔色には、憂が深く織り込まれた。

誰一人献策する者がなかった。

5

すると李白が笑いながら云った。

「文章で嚇して来たのです、文章で嚇して帰しましょう。蕃使をお招きなさりませ、私、面前で蕃書を認め、嚇しつけてやることに致します」