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とうげ
峠
木暮 理太郎
「山と渓谷」1938(昭和13)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,587 字 · 10 页
高原は人に利用されようがされまいが依然として高原たるに変りはない。然るに峠は全く対人的関係にあるので、たとえ其箇所が峠たるに適した資格を完全に具えているにしても、人が通って呉れなければ、宝の持ち腐れも同様で、はれて峠と名乗ることを得ないのである。
高原には高さの最低限度が必要であるように思われる。其限度よりも低いと最早高原とはいえなくなるような気がする。峠にも亦この最低限度というようなものがあって欲しいように考えるが、高原のように誰もが首肯するに足るような、多くの人から暗黙の裡に認められている標準の高さというものが有るのか無いのか、てんで見当も付かない。二千五百米以上という針木や三伏のように高い者もあれば、七十米にも足りない高田尾や百米を僅に超えた畦倉などが中国の西部にあって、どれも皆峠と呼ばれているのであるから、峠の標準の高さを見出そうとすることは、まるで雲を掴むようなもので、畢竟徒労に帰する虞が充分にある。
しかし、峠を坂と呼んでいる所も少くない、それが概して低い峠である所から察すると、或高さより低い峠は坂と呼ばれたかにも思われる。けれども可なり高い坂と名の付く峠たとえば千九百六十八米の車坂などもあるので、必ずそうと断定することは出来ないし、又或高さの正体もはっきりしていないこと上記の通りである。