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くずれるおにかげ
崩れる鬼影
海野 十三
「科学の日本」博文館、1933(昭和8)年7月~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,100 字 · 69 页
それならば、力さえ籠めれば開くだろうという見込がつきました。
ドーン。
ガラガラと扉が開きました。
部屋の中へ飛びこんでみますと、そこは図書室のようでもあり、何か実験をしている室でもあるらしく、複雑な器械のようなものが、本棚の反対の側に置いてあり、天体望遠鏡のようなものも見えます。しかし肝心の兄の姿が見えません。
(攫われたのかナ)
私はハッと胸をつかれたように感じました。
「兄さーん!」
うーッ、うーッというような呻り声が突然聞えました。呻り声のするのは、意外にも私の頭の上の方です。私は駭いて背後にふりかえると、天井を見上げました。
「ややッ――」
私はその場に仆れんばかりに吃驚しました。兄が居ました。たしかに兄が居ました。しかし何という不思議なことでしょう。兄は天井に足をついて蝙蝠のように逆さまにぶら下っているのです。頭は一番下に垂れ下っていますが、私の背よりもずっと高くて手がとどきません。兄の顔は、熟柿のように真赤です。両手は自分の顔の前で、蟹の足のように、開いたまま曲っています。何物かを一生懸命に掴んでいるようですが、別に掴んでいる物も見えません。