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くずれるおにかげ
崩れる鬼影
海野 十三
「科学の日本」博文館、1933(昭和8)年7月~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,100 字 · 69 页
「ありがとう。だんだんと元気が出てきました。僕も連れてっていただきますから、どうぞ」
「どうぞとはこっちの言うことです。貴方がいて下さるので、こんなひどい事件に遭っても私達は非常に気強くやっていますよ」
そこで私達も白木警部と同じ自動車の一隅に乗りました。私達の自動車は先頭から二番目です。警笛を音高くあたりの谷間に響かせながら、曲り曲った路面の上を、いとももどかしげに、疾走を始めました。
「兄さん」と私は荘六の脇腹をつつきました。
「なんだい、民ちゃん」と兄は久しぶりに私の名を呼んでくれました。
「早く夜が明けるといいね」
「どうしてサ」
「夜が明けると、谷村博士のお邸にいた化物どもは、皆どこかへ行ってしまうでしょう」
「さア、そううまくは行かないだろう。あの化物は、あたりまえの化物とは違うからネ」
「あたりまえの化物じゃないというと……」
「あれは本当に生きているのだよ。たしかに生物だ。人間によく似た生物だ。陽の光なんか、恐れはしないだろう」
「すると、生物だというのは、確かに本当なんだネ、兄さん。人間によく似たというとあれは人間じゃないの」
「人間ではない。人間はあんなに身体が透きとおるなんてことがないし、それから身体がクニャクニャで大きくなったり小さくなったり出来るものか。