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あらしのよる
嵐の夜
小川 未明
「宗教界」1906(明治39)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,980 字 · 6 页
少女の名はかねと云いました。母さんや、父さんの帰るを待っているのであります。午後の天気は、そよそよと萩や、柿の葉を鳴らす風の少しあるばかりで、日本晴れのした好い日和でありました。
少女はもはや遊びに飽きてまりを抱いて、裏庭から細道を辿りながら、二三町も行きますと藪になっていて、土手の両方には樒の赤い実が鈴生になっている、萱の繁って、白い尾花の戦いでいるだらだら坂になりますが、そのだらだら坂を下りますと、すぐ前に青々として目の醒めそうな日本海の波は、ど、どん、どどんと足許まで、打ち寄せる浜辺に出るのであります。少女は三毛を抱いて、海辺へ来ました。でうろついてやがて猟師の沢山に住んでいる村に着きますと自分の顔を知ってる、真黒く日に焼けた男がこっちを見て笑っています。少女は殆んど毎日のようにこの辺まで遊びに来るのであります。低い、小さな破れた家が幾軒となく並んでいて前には沙の上に鰯や、鯖や、その他いろいろの小魚を乾しているのです。まりは魚臭い匂いを嗅ぎつけて、しきりに鼻をひくひくやって、にゃあにゃあと鳴きだしました。けれど少女は「まりや降りしてはいけないよ。