轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

あるおんなのしょうがい

嵐・ある女の生涯

島崎 藤村

島崎藤村『嵐・ある女の生涯』。同一底本的分册已合并为一书。收入:ある女の生涯、食堂。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,846 字 · 96 页

青空文庫

その頃はお三輪の母親もまだ達者、彼女とても女のさかりの年頃であったから、何の気なしにこの訪問者を迎えて、皆で諸国行脚の話なぞを聞いた。彼女の眼に映る住職は眉毛の長く白い人ではあったが、そんな長途の行脚に疲れて来た様子はすこしも見えなかったことを覚えている。

何年となく思い出したことのないこの旅の老僧がお三輪の胸に浮んだ。彼女も年をとって見て、不思議と他人の心を読んだ。あれはただの訪問でもなくて、この世の暇乞いであったのだと気がついた。

お三輪は驚きもし、悲みもした。彼女自身が今は同じように、それとなく親しい人達への別れを告げて行こうとしていたからである。明日もあらば――また東京を見に来る日もあらば――そんな考えが激しく彼女の胸の中を往来するようになった。彼女は自分の長い滞在がこの食堂で働く人達のさまたげになろうかと考え、上京して見て反って浦和へとこころざすようになった。彼女は親に従い、子に従い、孫にまで従って来たように、どんな運命にも逆おうとはしなかった。

「新七、お前さんは築地まであたしを送っておくれ。今度出て来たついでに、従妹のところへも寄って行きたいから」