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あらし
嵐
島崎 藤村
島崎藤村『嵐』。同一底本的分册已合并为一书。收入:嵐、分配。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,007 字 · 108 页
暮れからずっと続けている薬を旅の鞄に納めることも忘れてはならなかった。私は同伴する人たちのことを思い、ようやく回復したばかりのような自分の健康のことも気づかわれて、途中下諏訪の宿屋あたりで疲れを休めて行こうと考えた。やがて、四月の十三日という日が来た。いざ旅となれば、私も遠い外国を遍歴して来たことのある気軽な自分に帰った。古い鞄も、古い洋服も、まだそのまま役に立った。連れて行く娘のしたくもできた。そこで出かけた。
この旅には私はいろいろな望みを掛けて行った。長いしたくと親子の協力とからできたような新しい農家を見る事もその一つであった。七年の月日の間に数えるほどしか離れられてなかった今の住居から離れ、あの恵那山の見えるような静かな田舎に身を置いて、深いため息でも吐いて来たいと思う事もその一つであった。私のそばには、三十年ぶりで郷里を見に行くという年老いた嫂もいた。姪が連れていたのはまだ乳離れもしないほどの男の子であったが、すぐに末子に慣れて、汽車の中で抱かれたりその膝に乗ったりした。それほど私の娘も子供好きだ。その子は時々末子のそばを離れて、母のふところをさぐりに行った。