轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
じゅんさじしょく
巡査辞職
夢野 久作
「新青年」1935(昭和10)年11~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,907 字 · 63 页
何事かと思って睡むい眼をコスリコスリ応接間に出て来たのを見ると、草川巡査は如何にも急き込んでいるらしく、挨拶も何もしないまま質問した。
「……イ……一知は……テ……手紙を書きませんでしょうか」
鶴木検事は、見違える程窶れて形相の変った草川巡査の顔を、茫然と凝視した。汗とホコリにまみれて、泥だらけの浴衣にくるまっている哀れな姿を見上げ見下しながら、静かに頭を左右に振った。
「……書いて……おりませんでしょうね。一知は……一度も……どこへも」
検事は依然として無言のままうなずいた。そこへ夫人らしい人がお茶を酌んで来たが、草川巡査は棒立ちに突立ったまま見向きもしなかった。
「……そ……それを……手紙を出すことを許して頂けませんでしょうか……一知に……」
「……誰に宛てて……書かせるのかね」
腰をかけて茶を飲んだ老検事がやっと口を利いた。
「妻のマユミは無学文盲ですから……父親の乙束区長の方へ、手紙を出してもいいと、仰言って頂きたいのですが……そうしてその手紙を検閲なさる時に、私に見せて頂きとう御座いますが……」
「ハハア。何の目的ですか……それは……」
「兇器を発見するのです」