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こうだんし

巷談師

坂口 安吾

「別冊文藝春秋 第一七号」1950(昭和25)年8月3日発行

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,894 字 · 22 页

青空文庫

どうしても末路を見破り、人民裁判にかける意向が明かなのである。彼らは骨の髄から懲罰精神でかたまっているらしい。つきあいにくい人種である。

西洋の童話には森の妖婆がでてくる。これが共産党の先祖で怖しい呪いをかける。末路を予言するのである。口の中でブツブツ言うのだが、赤頭巾を食う狼よりも兇悪不逞で、人間の敵だ。腰のまがった妖婆とちがって、威勢のよい共産党はもッとハッキリきこえよがしに呪いをかける。近代的だか軍人的だか知らないが、人間の敵には変りがない。森の妖婆の中にも「善い妖婆」がまれにはいる。シンデレラ姫についた妖婆がそれである。私にはそんな共産党はついてくれない。そして私はどうしても人民の名によって吊しあげられることになるのである。

しかし巷談師はこんな不景気な手紙ばかりもらうわけではない。

★

「もし、もし。ちょッと、ちょッとオ。待ってえ! 坂口さん」

巷談師のうしろから大声で叫びながら、自転車で追ってきた女の子がいる。この温泉町はパンパンが大通りへ進出して客をひッぱるので有名だが、自転車で追っかけた話はまだきいたことがない。

見たところパンパンと見分けがつかなくて、同じぐらいの年恰好だ。