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こうだんし

巷談師

坂口 安吾

「別冊文藝春秋 第一七号」1950(昭和25)年8月3日発行

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,894 字 · 22 页

青空文庫

「コーダンの坂口さん? そうでしょう」

「……」

「そうでしょう? そう言ったわ。坂口さんね?」

「そう」

「じゃア、いッしょに、きてよ。待ってるのよ」

「あなたは誰ですか」

「××館よ。お客さんにたのまれたからさ。あの人よんでおいで、コーダンの坂口さんだからッてさ」

「お客さんて、誰?」

「知らないわ。来てみれば、分るでしょう」

「女?」

「ウフ」

と、女は笑った。恐しくなめられたものである。

「××館、あそこよ。知ってるでしょう」

女は自転車にのって走りだした。女が美人だとノコノコついて行く性分だそうだが、不美人になめられては、ながく魂をぬかれているわけにもいかない。ウッカリすると自動車にひかれるから、彼はふりむいて歩きだす。

女が怒ってフルスピードで戻ってきた。

「なによ、あんた! きこえなかったの。私の言ったことが」

目から火焔がふいている。

「待ってるわよ。そう言ったじゃないの!」

「女?」

「まだ言ってるわね」

女は呆れて苦笑したが、わが意を得たりという親愛の情も同時にこもって、

「そんな人、いるの? ウフ。夢見ちゃダメよ。お気の毒さまだ。私がなってあげようか。アッハッハ。