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こうだんし

巷談師

坂口 安吾

「別冊文藝春秋 第一七号」1950(昭和25)年8月3日発行

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,894 字 · 22 页

青空文庫

ぜひとも巷談師の目に必殺の文字をたたきこんでやろうという闘魂歴々たるものがある。

弟子入りの手紙は、宛名に先生が三分の二ぐらい、三分の一ぐらいが様、まれに殿というのがある。様と殿の手紙には、先生とよぶのは変です、という意味の言葉が、くりかえし述べられているのが通例である。彼らの共通の感覚で、この感覚の内容は私にはよく分らないが、先生という呼称を空疎なもの、たとえば彼らと学校の先生との関係などをそれに当てはめ、私をもっと親密なものと解していることが察せられる。

共産党は全部「殿」だ。しかし数通、この場合はハガキに限るが、殿も省いて呼びすてがあった。ハガキの作者はベランメー型で、筆で委曲がつくしがたいから、拳コの代りに呼びすてにして溜飲を下げているらしい。長文の手紙の作者は必殺の文字に自信があるから、悠々敬称をつけてくれる。

長文の手紙に何が書いてあるかというと、私の作品(主として堕落論)の批評が主であるが、中には私の作品の半数ぐらい読んでいて、一々槍玉にあげているのもある。そして、前者(堕落論その他ごく一部分の作品をとりあげて縦横に論破したもの)はいくぶん冷静で、あくまで論理によって巷談師の息の根をとめようとする気品をうかごうことができるが、後者(半数以上の作品を槍玉にあげているもの)は一時あやまって私の