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しみんのせいかつとかがく
市民の生活と科学
宮本 百合子
「科学ペン」1940(昭和15)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,385 字 · 9 页
ない、現在の女の社会での在りようや文化の性質に思いが致されるのである。
家庭における科学教育ということも、つまりはこういうところにかかっていると思う。夏休みには植物採集をさせますとか、科学博物館へつれてゆきますとか云う、それだけが厚みの全部ではないと思われる。
つい三四日前のことであったが、夕飯のすんだ餉台のところで、家のものと夕刊を見ていた。丁度『日の出』という大衆雑誌の広告が出ていて、そこに一つの字が目をひいた。本多式貯蓄法、林学博士本多静六。広告にそうかかれている。よほど以前にもこの博士の節倹貯蓄に関する法を語った文章を大衆的な雑誌でみたことがあったが、私は一種の感慨をもってその広告を眺めた。林学博士と云えば、農学の一部で、それは自然科学の分野に属す学問上の博士ということであろう。その人が、林学について語らずに、貯蓄法について語っていることを、吾もひともみっともない妙なことと感じない感覚というものは、日本のどういう文化・科学性を語っているのだろうかと思った。林学専門なら山がよく鑑定されるわけだろう。その直接間接の売買は、現在の経済の組立ての中では金銭上の富を意味している。