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ていてんをみてのかんそう

帝展を観ての感想

宮本 百合子

「婦人文芸」1934(昭和9)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,058 字 · 7 页

青空文庫

その解決のない矛盾と焦慮とを平面的で濃厚な色彩で辛くも塗り圧えようとしている苦しさが画面から私の感情に迫って来たのであった。

洋画の部でも、私は精神をつかまれたように感じて立ち止るような絵には出会うことが出来なかった。

この洋画の部では、去年「老婆」を出品して一般の注意をひいた漫画家の池部鈞氏が今年は「落花」という小さい絵を出し、二列に並べたところの上の方に一寸かけられている。「落花」は私に或る感銘を与えた。眼も鼻もないように顔を真白けに塗った「唄わしてよ」の少女が首に手拭をむすび裾をはし折って花見の人が去った後の緋モーセンの床几の上へ一人、すねを並べて足袋をつき出しているところが描かれている。この小さい諷刺的な絵は、感覚的な効果をもって日本の下層階級生活の貧困と猥雑さとその日暮しの感じとを、傍観的に、だが強く表現していたのである。

私は「落花」を見ているうちに、池部氏がこの社会的感情を更に一歩すすめてその中にある発展的なモメントをも表現しないのは、帝展という場所のためなのであろうか、または池部氏自身の世の中の観かたの限度がここに止っているか、そのどちらなのであろうかと興味を動かされた。