轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
おびひろまで
帯広まで
林 芙美子
「文藝春秋」1936(昭和11)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,656 字 · 28 页
蝿達を伊代は飽きずに眺めていた。眺めている間中、伊代は何も考えてはいないのだ。どんなに非道い目に逢っても死にたいなどとは一度も思ったことがなかったが、九太の事を考えると頭が重く沈んでいった。三年も連れ添っていると、三年の汐が返って来るものだとホールの朋輩が云っていたけれど、伊代はそれは本当かも知れないと思った。毎日、朝か昼か晩には、かならず九太のことを思い出していたのであった。時とすると、思い出していることがのべつ幕なしなので、うっかりすると踊りながら涙をこぼしそうになったりした。
冬に這入ると、伊代はホールを辞めて、マネキンガールになった。躯が整っていても、顔はあまり美しくないので、新市区の小さい呉服屋とか、薬屋や雑貨屋へ一日いくらで傭われて行った。だが、伊代には結局その方が気楽であった。伊代はマネキンになると、下駄屋の二階を引き払って渋谷の倶楽部の近くのアパートへ越して行った。下駄屋の二階よりはましであったが、それでも殺風景な張子の壁は、叩くとドスンドスンとにぶい音をたてた。窓の展望はビール会社の屋根ばかり見えて、風が吹くと、部屋の中は砂まぶれになった。