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ばくまついしんかいこだん
幕末維新懐古談
高村 光雲
14 猛火の中の私たち
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,717 字 · 8 页
の煽りで熱くなって、その酒に濡れた衣物が乾いて、烟が出ているのに気が附きました。乾きかけた袂からは酒臭い匂いが発散ていました。
そうして、火は私たちの上っている屋根の前を一面に舐めて、花川戸の方へ焼け延びて行きました。
やがて、父と私とは、家へ帰ることにしました。帰るといって私の師匠の家はもう焼失してしまっていますから、父の家へ帰るよりほかありません。網戸を伝って拝殿へ這い上り、其所からまた網戸を梯子にして大神宮様の敷き石の上へ降りました。
父は始終私の身辺を気遣い、わが身のことは忘れたかのように劬わってくれました。降りた処は雷門の直ぐ後ろで、それから大神宮の大きな花崗石の鳥居を潜り(この鳥居は後で見たら、中央からポックリと両つに折れていました。これは柳川力士雲竜久吉が納めたもので、その由を彫ってあった)仲店を仁王門に向って、伝法院へ這入り、庭を抜けて田圃を通り、前述の新門辰五郎のいる西門を、新門の身内のものに断わって通るまでに、後を振り顧って見ると、仲店から伝法院へ曲がる角にあった火の見櫓に火が掛かり、真赤になって火柱のように見えました。
それから、左は蛇骨湯、右は清正公のあるお寺の通り、それから上野の車坂の方へ真直に合羽橋を渡ると、右角が海禅寺(これは阿波様のお寺)、二丁ほど行くと、右側が東明寺で、