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ばくまついしんかいこだん
幕末維新懐古談
高村 光雲
18 一度家に帰り父に誡められたはなし
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,931 字 · 6 页
というものが頻々と起っている。それは実にその伝播の迅さといっては恐ろしい位のもの、一種の群衆心理と申すか、世間はこの噂で持ち切り、人心恟々の体でありました。
また、或る人のいうには、
「何某の大店の表看板を打ち毀して、芝の愛宕山へ持って行ってあったそうな。不思議なこともあるものだ」
という話。その話を聞いているものは、誰も彼も、妙な顔をしている。昔、やっぱり米騒動のあった折に、大若衆が出て来て、そんなことをしたものだという。やっぱり、今度のそれも大若衆がやったのであろうなど腹の中で考えて一層不安が増し、取り沙汰が喧しくなるという風で、物情実に騒然たる有様であった。
私は、師匠の店におって仕事をしている間、子供心にも、これらの世間話しを聞きますにつけて、自分の両親たちのことが心配でならないのでありました。一心に毎日の仕事をしている中にも、ふと、家のことを思い出すと、仕事の手を留めて、茫然とその事を考えている。今頃、父はどうしていられることだろう。母様は何をしていられることか。……と思い出しますと、どうもこうして師匠の家に自分だけ安閑とはしていられない気がして来るのでありました。