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ばくまついしんかいこだん
幕末維新懐古談
高村 光雲
70 木彫の楠公を天覧に供えたはなし
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,722 字 · 6 页
明治二十六年三月二十一日がその当日でありました。
東の空が白む頃関係者は学校へ出揃い、木型を車に積んで運び出しましたが、上野から宮城までにかれこれ二時間位掛かり、御門を這入って、それから三本の足場を立て、滑車で木寄せの各部分を引き揚げては組み合わせるのに、熟練はしていても一時間半位を費やし、都合四時間ほどの時間が掛かりました。なかなか大騒ぎで、大八車が三台、細引だの滑車だの手落ちのないよう万事気を附け、岡倉校長を先導に主任の私、山田、後藤、石川、竹内、その他の助手、人足など大勢が繰り込みましたことで、仕事は滞りなく予定の時刻の九時頃に終りました。御玄関に向った正面へ飾り附け、足場を払って綺麗に掃除を致し、幔幕を張って背景を作ると、御玄関先は西から南を向いて石垣になっていて余り広くはありませんから、其所へ楠公馬上の像が立つとなかなか大きなものでありました。
それに材は檜で、只今、出来たばかりのことで、木地が白く旭日に輝き、美事でありました。
これで好いとなりましたのが午前十一時。
聖上には正十二時御出御という触れ。一同謹んで整列をして差し控えておりますと、やがて、フロックコオトの御姿で侍従長徳大寺公をお伴れになってお出ましで御座いました。