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ばくまついしんかいこだん

幕末維新懐古談

高村 光雲

01 私の父祖のはなし

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,946 字 · 6 页

青空文庫

というので、その主人は一通りの薬剤のことには詳しかったので、解剤をもって手当てをしました。すると、ようやく吃逆は直りましたが、声は全く立たなくなる。身体は利かなくなる。まるで中気のような工合になって、ヨイヨイになってしまいました。

この時はちょうど私の父の兼松が九歳の時であります。九歳の時から一家扶養の任に当って立ち働かねばならない羽目になったというのはこれからで、その上弟が二人、妹が一人、九ツや十の子供には実に容易ならぬ負担でありました。

こういう風の一家の事情故、その暫く前から奉公に出ていた袋物屋を暇取って兼松は家へ帰って来ました。家へ帰って来はしたものの、どうして好いか、十歳にも足らぬ子供の智慧にはどうしようもない。けれど、小供心に考えて、父富五郎は体こそ利かぬようになったが、手先はまことに器用な人であったから、「お父さん、何か拵えておくれ、私が売って見るから」というので、子供ながら手伝い、或る玩具を製え、それを小風呂敷に包んで縁日へ出て売り初めたのです。

そのおもちゃというのは、今では見掛けもしませんが、薄い板を台にして、それに小さな梯子が掛かり、梯子の上で、人形の火消しが鳶口などを振り上げたり、火の見をしていたりしている形であります。