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あるたんぼうきしゃのはなし
平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕
平林 初之輔
平林初之輔『平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕』。同一底本的分册已合并为一书。收入:或る探訪記者の話、探偵戯曲 仮面の男、オパール色の手紙、私はかうして死んだ!、祭の夜、秘密、華やかな罪過、動物園の一夜、誰が何故彼を殺したか。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 113,247 字 · 229 页
オパール色の手紙
四月十三日
四月十三日
こんなことが信じられるだろうか? でもじっさい妾は自分の眼で見たのだ。あの人が、世界でたった一人の妾の人だと信じきっていたあの人が、全く世間並みの、やくざな、汚らわしい人間であったなんて。
今朝の十時に、妾はあの人の書斎へはいって、書棚からミロッセの『コンフェッション』を探していた。すると、何という偶然の一致だろう。ちょうど、その書物をぬき出すとたんに、オパール色の一通の封書が妾の脚元へ落ちてきた。もちろん封は切ってあった。妾は何の気もなしに、それを拾いあげて全く偶然に、中味をひき出して見た。というのは妾はこれまでついぞ夫の手紙を無断でよんだことはなかったからだ。
封筒と同じ色のレターペーパーに、紫のインキで次のように書いてあった。
あなたは洪水のようにお手紙を下さるのね。きっと貴方は朝から晩まで妾の手紙ばかり書いていらっしゃるのでしょう。妾、ただ読むだけでへとへとになっちゃうのよ。ポストをあけてみると、きっと貴方のお手紙がはいっているんですもの。でも妾、貴方のお手紙をよむのはそれはそれは愉快だわ、貴方のお手紙はいろいろなことを考えさせるんですもの。