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ひらいずみきこう

平泉紀行

村山 俊太郎

──専攻科第一類歴史部──

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,864 字 · 10 页

青空文庫

茲にても我等を迎ふる人のあり

旅の暮れなり懐かしきかも

ひな乙女等のかざりし室の榛の香の

強く泌みけり山里の暮

疲れたる身に泌々と真白なる

花の香の胸うちにけり

胸うちし真白き花よ榛の名花よ

ひな乙女なる香の放つなる

知らぬ地の窓辺近くにオルガンを

ひけば心もすみ渡りけり

遙々とわが家はなれし山里に

ふく山風のさみしかりけり

かくして九時半「世之助伍長」の軍隊式号令にて就寝。

風強し、心不安、また不安、雨落つ、ますます不安、夢は故郷か、旅先か、父母兄弟、また妻を子も案ぜらる人もあるに違いない。

また旅の先ざきに胸さわぐあこがれをまどろむ人もあるだろう。

さみだれの降り残してや光堂

夏草やつはもの共が夢の跡

ああそうだ待っている。まっている。夢の文化が待っている。緑につつまれた伽藍も待っている。美しかった人びとの夢、寂しかった人びとの夢が夏草と一しょにわれらを迎えているのだ。

すめらぎのみ代栄えんと東なる

みちのく山に黄金花咲く

こう万葉詩人大伴家持は詠んでいる。われらを待つみちのくの夢は寂しく、静かであるが、われらの結ぶ夢のいかばかり躍動していることか。

おおさらば羽陽の人びとよ。