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ひらがげんないとりものちょう

平賀源内捕物帳

久生 十蘭

萩寺の女

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,159 字 · 39 页

青空文庫

堺町の小屋は割れッ返るような騒ぎでげす。手前、早速、馳せ参じて、中段を拝見してまいりましたが、まったくもって敬服尊敬の至り。……

『右よ左と附廻す、琥珀の塵や磁石の針』……琥珀の塵や磁石の針、はいい。大先生のような究理学者でなければ、とても出ない文句。先生のご才筆には、ただただ感涙にむせぶばかり、へえこの通りッ」

ガクリと坊主頭を下げる。

源内先生は、焦れったそうに足踏をしながら、

「それはいい、……それはいいが、一瓢さん、ちとひょんなことになった。売出しの節は色々とお骨折りをかけたが、どうも馬鹿な破目になって、弱っているところだ。大きな声じゃ言えないが、あの櫛を挿す娘は、みな妙な死方をする」

「先生、威かしちゃいけません」

「いや、本当の話。その掛合で、これから浜村屋の楽屋へ行くんだが、あなたもどうか一緒に行ってください」

一瓢は、何か思惑ありげに眼を光らせ、

「浜村屋に、何かあったんですか」

「まだ、そんなところまで行っていない。今のところは、ほんの引っ掛りだけなんだが」

「よござんす。どんなことか知らないが、あっしもお供しましょう。役者に女、と、ひと口に言うが、あの路考ッて奴ほど薄情な男はない。