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ひらがげんないとりものちょう

平賀源内捕物帳

久生 十蘭

山王祭の大像

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,946 字 · 34 页

青空文庫

……押問答をしている場合ではない。何はともあれ、早速、象の腹をあけて見ることにいたそう。……伝兵衛、なるったけ象を損じないようにして腹をあけて見ろ」

「ようございます」

すぐそばが、外麹町、や組の番屋。追廻しが三、四人飛び出して行って、竹梯子に鳶口、逆目鋸、龕燈提灯などを借りて戻ってくる。

木枠といっても、桐に朴の木をあしらったごく軽いもの。伝兵衛、梯子でのぼって行って象の左の脇腹からすこし上った辺を逆目鋸で挽きはじめたが、骨組さえ挽切れば、後は胡粉と膠で固めた日本紙。挽くほどもなく肩まで入るほどの穴がパックリと黒い口をあける。

「おい、龕燈」

穴から龕燈を差入れ、象の胎内を照しつける。

見るより、伝兵衛、アッと叫び声をあげた。

「象の腹の中に若い女が死んでいます」

麻の葉の派手な浴衣に、独鈷繋ぎの博多帯、鬘下地に結った、二十五、六の、ゾッとするような美しい女が、浴衣の衿元から乳の上のあたりまで露出しにしたひどく艶めいた姿で、象の下ッ腹の窪みにキッチリ嵌込むようになって死んでいる。左の乳の下がドップリと血に濡れて。

薄くあけた切の長い一重目の瞼の間から烏目がのぞき出し、ちょっと見ると、笑っているよう。