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ひらがげんないとりものちょう
平賀源内捕物帳
久生 十蘭
山王祭の大像
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,946 字 · 34 页
ひとがせっかく究理の実験をしているところを騙討ちみたいに連れ出して、象の腹の中へ入って見てくれとは何事です。嫌だよ、断わるよ。こんなボテ張りの化物みたいなものの胎内潜りなんか、真ッ平ごめん蒙るよ」
伝兵衛の方は、すっかり心得たもので、決して先生に逆わない。
「ああ、そうですか。嫌なら嫌でようござんす。お忙しいところをこんなところへ引き出して申訳ありませんでした。……お詫びはいずれゆっくりいたしますが、あっしは気が急いておりますから、じゃ、これで……」
源内先生、狼狽えて、
「まア、そう素気ないことを言うな。お前はひと交際がわるくて困る。いったい、この象がどうしたんだと」
「いいえ、別にどうもこうもありゃしません」
「そう突っ放すもんじゃない。だいぶ面白そうな話だったじゃないか。……それで、四人はたしかに里春の声を聞いたというんだな」
伝兵衛は、心の中で北叟笑みながら、さあらぬ体で、
「ええ、そうなんです。……練出すときはさほどでもなかったが、追々陽がのぼるにつれて、象の胎内は蒸せっかえるような暑さになった。ひっくり返えられては困ると思って、師匠大丈夫か、と交るがわる声をかけると、里春は、その都度、あいよ、大丈夫。