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ひらがげんないとりものちょう

平賀源内捕物帳

久生 十蘭

長崎ものがたり

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,367 字 · 36 页

青空文庫

た。

とっぷりと日が暮れてから悠々と起出して衣服を替え、藤十郎と福介を連れて長崎屋を出る。

福介は心配して、

「先生、これからどちらへ」

先生は、煩そうに首を振って、

「煩くいうな、来て見りゃアわかるさ」

と、膠もない。

行着いたところが古川町の闕所屋敷、唐通詞陳東海の宅だった。

まるで自分の家ででもあるように横柄な顔で玄関からズカズカと奥へ罷り通る。

そこは陳東海の居間と覚しく、三十畳程の広々とした部屋で、床には油団を敷詰め、壁には扁額や聯を掛け、一方の壁に寄せて物々しいまでに唐書を積上げてある。書箱の傍に紫檀の書卓と椅子があって、その下に見事な豹の皮が敷いてある。

机の上には銀の燭台が造付けになっていて三分の一ばかり燃え尽した支那蝋燭が差込まれている。

部屋の中には奉行始め出島乙名、甲必丹オルフェルト・エリアスと館員一同、与力と同心が五人ずつ、吉雄幸左衛門、西善三郎、案内を出した人は一人も洩れなく先着していて、何事が始まるのかといった顔付で思い思いのところへ控えている。

源内先生は、藤十郎と福介を下座の席へ置き、一同の前に進んで一礼してから、

「今夕、ここへお集まり願ったのは、他のことでもありません。