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こうふくについて
幸福について
宮本 百合子
「婦人画報」1946(昭和21)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,007 字 · 18 页
そして後からよくよく考えてみたら、その七百円の生活費はどこから出てくるのかしらと思ったら、政府が呉れるのではなくて、みなさんの貯金から出すことなのですね。私、すっかり、糠よろこびしてしまいました。
政府はこのモラトリアムをしなければ、日本の経済状態が潰れるとおもってやったのでしょうけれども、一般私たちの経済事情から申しますと、どなたのお家でも、相当にあった貯金なども使い果してしまっている。
例えばいろいろな火災保険であるとか、戦時保険であるとか、また、退職手当というものも、大分使い果してしまっているのであります。別に私たちのところに、何万円もの金があって、それが自由になるなどという人は一般にはないわけです。
モラトリアムの決定によって、五人家族を標準に、五百円生活をしろということに規準が置かれたのですが、この五人家族というのは、なぜこんなふうに標準をたてたかと申しますと、日本の一軒の家の子供の統計は、年々殖えておりますが、多いところもあるでしょうし、少ないところもあるので、まあ三人ならいいだろうということで、家族全部で五人、五百円で暮せ、ということになったのだそうです。