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ゆうれいぶね

幽霊船

小川 未明

「赤い鳥」1924(大正13)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,633 字 · 8 页

青空文庫

一時は、はっと思って、うれしさに胸が躍りましたけれど、つぎの瞬間には、気味悪さで体じゅうがおののきました。

「こいつめ、俺まで、殺す気なのか?」と、乙は狂いはじめました。

その間に、船は、ますます近く、波を切って、島に近づいてきました。乙は、腰にあったピストルを取り出しました。そして、船を目がけて、つづけさまに火ぶたを切ったのでした。

しかし、それは、幽霊船でなかったのか、消えなかったのです。船が岸に着くと、二人は、陸へ踊り上がりました。

「おお、おまえは、気が狂ったのか!」といって、なおも、暴れ狂う乙をようやくに押さえつけました。

乙は、まったく、気が狂ってしまったのです。あの夜、二人の乗った船は、あちらの陸に暴風のため吹きつけられました。そして、波の静まるのを待って二人は、島へ仲間を迎えにやってきたのでした。

二人は、気の狂った友だちを船に乗せて、あちらの陸へと帰ってゆきました。それから、二人は、手あつく、哀れな友だちを介抱しましたので、だんだんと気の狂ったのが、もとに返って、いつしかなおってしまいました。それから、三人は、永く仲のいい友だちでありました。