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ひろば
広場
宮本 百合子
「文芸」1940(昭和15)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,809 字 · 31 页
おお
われら 若い者――
われら 若い者
という反覆句になると、それまではひょろひょろしながらついていた声も急に目の醒めたような心からの力で、
おお
われら 若い者
と声を揃えて歌い切るのである。朝子はあらゆる感覚を開放して、その歌声と雰囲気とに浸り込んだ。ふりかえってバルコニーを見上げれば、その一団の若い男女は別に誰にも見てもらう気もなく自然な感興のまま淡白に自分たちの間で拍子をとって歌っている。生活のよろこびは天真爛漫で、そのよろこびを合理的に現実的に自分たちで刻々につくっているものの寛闊な拘りなさもつよく感じられるのであった。
これに比べて、自分の感動は何と複雑で、ある感傷を常にもっていることだろう。それらを眺め、感動している自分の心のニュアンスの相違が、新しいおどろきでその晩は朝子をうった。こういう精気溢るる情景にふれる時、この三年の間朝子が胸を顫わしながら思って来た第一のことは、ああこれをこのままみんなに見せてやりたい、そういう激しい願望であった。このよろこびをうつしたい、伝えたい、そしたらどんなによろこぶだろう。そういう強い願望であった。