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ひろば

広場

宮本 百合子

「文芸」1940(昭和15)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,809 字 · 31 页

青空文庫

舞台では引続いて、三幕ものの戯曲が演じられた。それはワーロージャという青年が、自分の個人的な行動からその列車にのり組んだ仲間全体の計画を齟齬させた責任を感じて、自殺しかけて失敗する。死ねなかった彼は、その責任を償うために或る重要な献身的任務につく過程を真面目に扱ったものであった。ファジェーエフの小説にかかれた当時からは十何年か前の時代がその背景となっていた。ワーロージャに扮した青年俳優は、一人の娘をめぐって、そのものとしては善意な侠気が、政治的な紛糾の種となってゆく、その見さかいのつかなかった若い心の動きと悔恨とを巧みにとらえて表現した。見物席は自分の場合のこととしての実感でうけ入れ、批判し、緊張している精神の戦きが感じられた。ここの若者たちは、小説をよむのもそういう工合だし、芝居を見るのも、常にそういう素朴で勁い態度をもっているのであった。

幕間に、今度は朝子たちも席を立って、劇場のなかの大広間を、楕円形の輪をつくって歩いている人々の列に入った。超満員の今夜は、廊下にまでこの環ははみ出している。

鉢植の棕梠のかげにサンドウィッチやお茶を売っているブフェトがあったが、そちらは黒山の人だ。