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ひろば

広場

宮本 百合子

「文芸」1940(昭和15)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,809 字 · 31 页

青空文庫

自分を感じたのであった。

この都会には何と地球のいろんなところからの人間が集って来ているのだろう。この国自身の内にさえ幾つとない地方語をはらんでいて、一年のうちの大きい集会のある春や秋の季節になると、トゥウェルフスカヤの通りだけでも、色とりどりな民族・風俗展覧会のようになった。まだすっかり夏になりきらない五月の風に、日本の大名縞の筒っぽそっくりな縞の外衣の裾を吹かれながら、その上兵児帯のような帯で前ひろがりにおさえて行く人達は、同じ南方から都にのぼって来ていても、きりっとした長靴、腰のところで粋に短く裾のひろがった上衣に短剣を飾った高架索の連中とは、言葉も習慣もちがっているのであった。ジョン・リードのようにアメリカから来て、この国の歴史の一頁のうちに生涯を托して城壁の中に墓をもっている男もいる。中国の娘たちの濃い黒髪の切り口は、縞の鳥打帽から肩の上へまであふれて揺れ動いている。

この頃朝子たちのホテルには、ドイツから来た一団の労働者が泊るようになった。新しく時計工場が出来て、そこへ機械とともにやって来た人たちであった。男ばかりの一団であった。夜になると、彼等が声を合わせて自分の国の言葉で、この国の若者たちが好んで歌う歌をうたっているのが、朝子たちの部屋まできこえて来た。